忘却

良かったことだけ覚えておいて悪かったことのみ忘れることができる、人間は良くできた生き物だ。きっとだから生き延びることができるんだろう。

死ぬほど痛いと思った記憶はあるが、その痛み自体は全く思い出せない。

長女を妊娠中、推定体重が大きかった。予定日直前早く出てくるようにか、産院で何かを下から入れられぐりぐりされた。痛くてビックリしたのを覚えているがどんな痛みだったかは忘れた。

長女を出産には22時間かかった。15時間過ぎたくらいから気が狂いそうになった。自然分娩にこだわっていたが、もう切るなりなんなりして早く終わらせて欲しいと思った。でもどんな痛みと苦しみだったかはもう忘れた。

長女を出産後は何度もおっぱいが痛んでいた。乳首が出血してたことも確かあった。それでも授乳は続けないといけない。飲まれる度に傷口が傷む。最近次女におっぱいを噛まれるようになって、その痛みを思い出した。そういえば、あの頃はもっともっと痛かったなぁ。

死ぬほど苦しかったはずなのに、二人目を産むことを選んだ。おっぱいが毎日痛んでたのに、迷うことなく二人目も母乳で育てることを選んだ。悪い記憶を忘れていたからかもしれない。

いや、完全に忘れていたわけでもない。命懸けだったことや、大変だったことは覚えていたはずだ。でも、やっぱり産むことを選んだ。日々大きくなっていく娘たちを見ていると、この存在がないなんてもう考えられない。私の痛みや苦しみと比較したって二人の命の方が断然大きい。痛かったこととか苦しかったことなんて大したことないくらい、娘たちの存在は大きすぎる。

「忘却」への1件のフィードバック

  1. こういう話を聞くと、
    本当に女性の偉大さ、
    男の無力さを感じます。

    そう、すべての母親は、
    「新しい命」を
    命懸けで産み出しているのです。

    すごい。

    良く妻からも皮肉混じりに言われます。

    「あなたがやったのはカレーで例えると、パパッと塩ふったくらいだからね。」

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