慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)とは?

※この記事には一部プロモーションが含まれています。

慈恵病院のこうのとりのゆりかご(通称:赤ちゃんポスト)をご存じでしょうか?ドラマ化もされて話題になりましたよね。

「慈恵病院のこうのとりのゆりかごについて詳しく知りたい」

「赤ちゃんポストって大丈夫なの?今どうなっているの?」

など、今回は慈恵病院の取り組みやこうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)について気になっている方向けの記事となっています。

atsuko
atsuko

こんにちは、2児の母のatsukoです。以前から気になっていた慈恵病院の取り組みについて詳しくまとめてみました。

また、最後に望まない妊娠をしてしまった場合や、子育てに困った場合の相談先も掲載しました。

慈恵病院の取り組みは素晴らしいですが、赤ちゃんポストには賛否あります。

多くの人が赤ちゃんポストについて考えることで、少しでも適切な妊婦や母子支援に繋がれば嬉しいです。

スポンサーリンク

慈恵病院のこうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)とは?

まずは、「こうのとりのゆりかご」がどのようなものなのかを解説します。

※こうのとりのゆりかごが「赤ちゃんポスト」と呼ばれることもありますが、この記事では「こうのとりのゆりかご」=慈恵病院の取り組み、「赤ちゃんポスト」=子どもを匿名で預かる取り組みの通称として記載します。

慈恵病院が運営する子どもを匿名で預かる場所

赤ちゃんポストとも呼ばれる「こうのとりのゆりかご」は、慈恵病院が運営している子どもを匿名で預かる場所です。

ちなみに、慈恵病院では「こうのとりのゆりかご」を「赤ちゃんポスト」とは呼んでいません。赤ちゃんポストは一般的な通称として、不本意な形で広まってしまったようです。

慈恵病院とは、産婦人科や小児科などがある熊本の民間の病院です。こうのとりのゆりかごが設置されたのは、2007年の5月。当時、熊本県では0歳児の遺棄事件が起こりました。こうのとりのゆりかごは、「命を守る」という目的でドイツの例を参考にして開設したのです。

匿名で子どもを預かるという仕組みは、海外では例がありましたが、当時の日本では全く前例がないものでした。

賛否両論があり話題に

こうのとりのゆりかごは、虐待や遺棄から子どもを守る最後のとりでとして期待される一方で、批判も多くありました。

「子どもから出自を知る権利を奪っている」

「ネグレクトや安易な子捨てを助長している」

「危険な自宅出産や産後の長距離移動を行う女性が増えるのでは」

などの批判です。また、前例のない取り組みだったため、法律や国の規制は存在せず、慈恵病院と熊本市が様々な問題に取り組みながら独自に進めてきました。

2022年北海道に2例目の赤ちゃんポストが設置

2007年にこうのとりのゆりかごが慈恵病院に設置されて以降、似たような仕組みも登場しましたが継続できずになくなっていました。

2022年現在においては、5月に北海道に2例目の赤ちゃんポストとして、BABYBOX(ベビーボックス)という名前のものが設置されたと話題になっています。年齢制限はなく、事前にメールで連絡することで子どもを預けることが可能です。

スポンサーリンク

こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)を運営している慈恵病院とは?

匿名で子どもを預かるという日本初の取り組みを行った慈恵病院とはどのような病院なのでしょうか?詳しく解説しますね。

とても評判の良いキリスト教の病院

慈恵病院は元々、熊本のキリスト教(カトリック)の修道院が始まりです。修道院やキリスト教の精神は現在の慈恵病院にも引き継がれています。

慈恵病院は地元ではとても評判がよく、多くの人々に愛されてきました。こうのとりのゆりかごを始めた元院長の蓮田 太二さんや、息子で現医院の蓮田健さんの人柄も良さもとても評判のようです。

母子支援や無料で妊婦相談を受けている

慈恵病院の取り組みは、匿名で子どもを預かるだけではありません。

匿名で預けることを思いどとまった母親の支援や、匿名で子どもを預かって欲しいと考える妊婦や産後の母親からの電話相談も行っています。

特別養子縁組を行っている

慈恵病院では、育ての親が親権を持つことができる特別養子縁組も行っています。

慈恵病院の産婦人科で出産した子どもを、生まれた直後に育ての親の元へ届けるシーンはドラマの中でも出てきました。

こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)の現状

こうのとりのゆりかごは2007年に設置されたので、2022年現在は15年間経過したことになります。ここでは、こうのとりのゆりかごの15年間の実績をご紹介します。

預けられた人数は年間10人前後

こうのとりのゆりかごに預けられた人数は、2021年3月までで159人となりました。年間10件前後ですが、令和2年の預け入れ件数はわずか4件と減少傾向にあります。そのうち親の身元がわからないのは31人で全体の約20%でした。

(出典:【よく分かる】こうのとりのゆりかご 開設15年の歩みより(熊本日日新聞))

事件

2014年10月、こうのとりのゆりかごに乳児の死体が遺棄されるという事件が起こりました。自宅の浴槽で1人で出産し、産後すぐになくなってしまったそうです。供養してもらえるだろうと思い、こうのとりのゆりかごに母親が連れてきました。

(出典:慈恵病院HP

預けられた後

こうのとりのゆりかごに預けられた子どもは、親から連絡がない場合、児童相談所の判断によって要保護児童として保護されるそうです。市長が名付け親となり新しい戸籍が作られます。その後は、乳児院や児童養護施設、里親の元などで暮らすそうです。養子になることもあります。

(出典:慈恵病院のSOS赤ちゃんとお母さんの妊娠相談より)

こうのとりのゆりかご開設初年度に3歳の男の子が預けられました。15年経って18歳となった彼はメディアのインタビューにこう答えています。

「僕はこのゆりかごを通して助けてもらったし、今の幸せな生活があるので感謝の気持ちがある。賛否両論分かれる中で、大きなものをこのゆりかごは負っている」

Yahooニュースより

年間7000件前後の妊婦相談に無料で応じている

慈恵病院のこうのとりのゆりかごは、匿名で子どもを預けるだけではありません。匿名で預かるのはごくごく一部。

一方、妊婦からの相談は、年間7000件前後も無料で受けているのです。熊本県への相談は年間100件前後、熊本市への相談は年間500件前後なので、どちらと比べても桁違いに多い件数となっています。

(出典:令和2年度 こうのとりのゆりかごの短期的検証について

スポンサーリンク

慈恵病院や赤ちゃんポストに関するドラマ・本

慈恵病院のこうのとりのゆりかごや赤ちゃんポストに関することはドラマ化され、様々な本も出されています。

本は多数ありますが、比較的近年出版され私も読んだ2冊をご紹介します。

こうのとりのゆりかご〜「赤ちゃんポスト」の6年間と救われた92の命の未来〜

慈恵病院の取り組みを実話を元に再構築したドラマが、2013年11月25日の21:00-22:54にTBS系で放映されました。

とても感動的なドラマだったので、これを見て赤ちゃんポストへの印象が良いものへと変わった方も多いのではないでしょうか。冒頭に実際のこうのとりのゆりかごの映像も出てきます。

私もこのドラマを見たことがきっかけで、こうのとりのゆりかごに興味を持ちました。

ゆりかごにそっと―熊本慈恵病院「こうのとりのゆりかご」に託された母と子の命

「ゆりかごにそっと」は、慈恵病院の前院長であり、こうのとりのゆりかごの創設者である蓮田 太二さんが書かれた本です。こうのとりのゆりかごへの想いや設立までの苦悩、匿名出産の世界の現状などが解説されています。

ゆりかごに連れてくる人の背景や、ゆりかごの必要性も書かれていました。命を何よりも大切にし、当事者に寄り添い、たとえ逆境でも前例がなくても突き進む著者の姿に、読んでいて何度も泣きそうになりました。

赤ちゃんポストの真実

ドラマや蓮田 太二さんの本は、基本的に赤ちゃんポストに対して肯定的な立場で作られています。しかし、「赤ちゃんポストの真実」は客観的な立場から赤ちゃんポストへ疑問を投げかけている本です。

熊本日日新聞社の記者であり、長年こうのとりのゆりかごを追いかけている森本修代さんの本です。彼女は、こうのとりのゆりかごが美談として取り上げられていることを危惧し、こうのとりのゆりかごの問題点について追求しています。

ゆりかごに預けた母親の声や児童相談所の職員の声など様々な視点を元に、赤ちゃんポストの是非について考えさせられる本です。

私が慈恵病院や赤ちゃんポストのドラマや本を読んで思ったこと

最後に、私の赤ちゃんポストに対する考えを書きたいと思います。私はドラマや2冊の本、またこの記事を書くにあたって様々なニュース記事や資料に目を通しました。

赤ちゃんポストの是非はわからない

赤ちゃんポストの是非、つまり、匿名で子どもを預かることの是非については正直よくわかりません。

近年の報道では、「出自より命」と見出しが出され、命を守る赤ちゃんポストは肯定的に捉えられている気がします。

しかし、出自がわからないということで悩む人の気持ちは私には想像がつかないものだと思います。

また、赤ちゃんポストの存在を知ったことにより、自宅出産をして遠方から危険を犯して連れてくる母親が増えている可能性も否定はできません。

もちろん、それによって命を救っているケースもあると思います。メリットデメリットどちらが多いかはケースバイケースなので検証不可ではないでしょうか。

慈恵病院の取り組みは素晴らしい

「赤ちゃんポスト」の是非ははわかりませんが、慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」は素晴らしい取り組みだと思っています。

赤ちゃんポストとは、匿名で子どもを預けることができる場所のことです。しかし、「こうのとりのゆりかご」が行っているのは、それだけではありません、むしろそれ以外の取り組みの方が遥かに多いのです。

こうのとりのゆりかごに匿名で預けられた子どもは約15年間で31名。つまり赤ちゃんポストとしての利用は平均すると年間約2人です。

これに対し、親の身元がわかりこうのとりのゆりかごで保護した子どもは15年間で128人。

さらに、無料の電話相談を受けている件数は年間7000件前後です。そして、その多くが慈恵病院がある熊本ではなく県外からの問い合わせとなっています。

赤ちゃんポストの是非の議論よりも大切なこと

赤ちゃんポストの是非は、確かに議論や検証の余地があります。しかし、その前に行うべきことが他にあるのではないでしょうか。

「産前・産後・子育てにおいて、追い詰められたら相談できる場所が近くにあって欲しい。」と私はいつも思います。

こうのとりのゆりかごを頼りに全国から困った人が電話してきたり、訪れたりしています。結果的に匿名で子どもを預けてしまう人はその中のごくごく一部です。

自宅出産後に長距離移動してやってくる母親もいます。近くで助けてもらえる場所はなかったのでしょうか。

近くで助けてもらえる場所がなかった、もしくは知らなかったからわざわざ熊本県まで遠くからやってくるんですよね。

地方の一民間病院に任せるべき問題ではないのではないでしょうか。国として取り組み、各市町村単位で取り組み・周知すべき課題ではないのでしょうか。

スポンサーリンク

もし、望まない妊娠や子育てで困ったら?

慈恵病院以外にも、望まない妊娠や、産前産後・子育て支援を行っている団体は多数あります。

慈恵病院でも無料相談を受け付けていますが、困っている方は、まずは近くの団体や市役所などへの相談も検討されてみてはいかがでしょうか。

一般社団法人全国妊娠SOSネットワーク

社団法人全国妊娠SOSネットワークは、思いがけない妊娠をしてしまい困っている方向けのページを作っています。全国にある妊娠相談窓口が多数掲載されており、よくある相談など妊娠出産に関わる情報も掲載されています。

認定NPO法人フローレンスの赤ちゃん縁組

特定NPO法人のフローレンスの赤ちゃん縁組では、特別養子縁組の取り組みを行っています。妊娠相談や、養子縁組相談も無料で可能です。メールやLINEから気軽に相談できますよ。

行政

厚生労働省は、全国の各市町村に妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を提供できることを目的とした「子育て世代包括支援センター」の設立を目指しています。

お近くに子育て世代包括支援センターはありませんか? 妊娠〜産後まで様々な悩みに専門スタッフが対応してくれるそうです。

もしセンターがない場合は、市役所の子どもに関する部署(子ども未来部など)に問い合わせてみましょう。多くの市町村では電話やメールで相談に応じてくれます。

慈恵病院

慈恵病院ではフリーダイヤルで妊娠相談に無料で乗ってくれます。

まとめ

今回は匿名で子どもを預かる通称「赤ちゃんポスト」や、開設から15年経過した慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」について開設しました。

慈恵病院のこうのとりのゆりかごは、素晴らしい取り組みですが、子どもを匿名で預けることに関しては賛否両論があります。赤ちゃんポストの是非は良くわかりません。

しかし、まず先に議論すべきなのは、赤ちゃんポストの是非ではなく、我が子を赤ちゃんポストに預けるまで追い詰められる人をなくすための仕組みづくりではないでしょうか。

赤ちゃんポストを命を守る取り組みとして美談化して終わらせるのではなく、赤ちゃんポストの議論をきっかけとして子育てに優しい地域・国作りをしていけたら良いのではないかと思います。

この記事が1人でも困っている方のお役に立てれば嬉しいです。

この記事を書いた人
atsuko

在宅で民泊ホストやWEBやチラシなど制作・管理・ライティングなどがお仕事。作曲家の夫と6歳と9歳の姉妹と共に福岡県久留米市在住。2009年、WEBデザイン技能検定2級取得。2012年8月、第77回ピースボートに乗船し地球大学受講。2015年〜民泊サイトAirbnbのスーパーホストのステータスを10回以上獲得。2018年、電子書籍と紙で「おっぱいのすべて」を出版。グリーンコープの組合員歴10年以上、活動組合員歴7年以上。地域委員、副地域委員長、福祉委員などを経て、現在、久留米支部常任委員。

社会貢献
スポンサーリンク

タイトルとURLをコピーしました